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2022-06-19

交通調査の手法

交通調査とは

交通調査は、都市や地域における交通の流れや問題点を調査・分析するための手法であり、都市計画や交通政策の策定において極めて重要な要素となります。この記事では、交通調査の必要性と手法について説明します。

交通調査の目的

交通調査は、路上の車両流、歩行者の動き、交通渋滞、交通安全、公共交通の効果といった多くの要素に対する深い理解を提供します。このような調査は、次のような目的を持って実施されることが一般的です。

  • 交通渋滞の解析と解消
    交通調査によって、どの道路がもっとも混雑しているのか、何がその渋滞の主因なのかを理解することができます。これにより、効果的な対策を施すことが可能になります。

  • 安全性の確保
    調査は、交通事故の発生する場所やその原因、特に危険な交差点や道路を明らかにすることができます。

  • 公共交通の効率化
    どの路線がもっとも利用されているのか、または新たな路線が必要な場所はどこかといったことを明らかにします。

  • インフラ投資の優先順位付け
    どの道路が修繕や拡張を必要としているのか、どの交通システムがもっとも効果的なのかを評価します。

  • 環境への影響評価
    交通の流れと環境への影響との関係を評価し、環境負荷の低減策を練ることができます。

  • 社会経済的影響
    交通の流れが地域経済や社会に与える影響を分析し、より全体的な都市計画を考える際の参考にします。

  • 技術評価
    新しい交通技術やシステム(例:自動運転車、スマートシティ技術など)が現実の交通環境でどれほど効果的であるかを評価します。

  • 持続可能性
    交通調査は、都市が持続可能な方法で成長するための鍵を提供します。これには、公共交通の促進、歩行者エリアの拡大、自転車道の設置などが含まれる場合があります。

車の動きに着目した交通調査

車の動きに着目した交通調査は、交通ネットワークや道路上での車両の動きに関するデータを収集し、交通状況や交通政策の策定に役立つ情報を提供するために行われる調査です。この中で、「道路交通センサス」と呼ばれる取り組みが行われます。

道路交通センサス

道路交通センサスは、主に道路と交通の実態を把握するための調査プログラムです。これは特定の地域や都市で行われ、交通インフラの改善や交通計画の策定に利用されるデータを収集します。道路交通センサスは、様々なデータ収集手法を組み合わせて行われますが、次の2つの主要な内容が含まれることがあります。

  • OD調査(Origin-Destination調査)
    OD調査は、車両がどこからどこへ移動したか(出発地と目的地)を調査する手法です。これにより、主要な移動パターンや需要の傾向が把握されます。例えば、通勤や買い物などの目的別の移動ルートや時間帯が分かり、交通ネットワークの効率化や渋滞の緩和に活用されます。

  • 一般交通量調査
    一般交通量調査は、特定の道路や交差点などでの車両の通行量を計測する調査です。これにより、特定の場所での交通量のピーク時間や日々の変動などを把握することができます。交通量調査は、道路の設計や信号制御の最適化、交通の流動性向上に貢献します。

道路交通センサスではこれらの内容を組み合わせてデータを収集し、交通ネットワークの効率化や交通インフラの改善に向けた施策の立案に活用されます。

人の動きに着目した交通調査

人の動きに着目した交通調査は、特定の地域や都市での人々の移動や旅行に関する情報を収集し、そのデータを解析して交通インフラの最適化や交通政策の策定に活用するための手法です。この種の調査は、都市や地域の交通システムを理解し、より効率的で持続可能な交通手段やインフラを提供するために重要な役割を果たします。人の動きに着目した代表的な交通調査に「PT調査」があります。

パーソントリップ調査(PT調査)

パーソントリップ調査は、特定の地域や都市での人々の移動や旅行に関する情報を収集するための調査方法です。

パーソントリップ調査は、次のような情報を収集するために実施されます。

  • 出発地と目的地
    人々がどこからどこへ移動するか、またその理由を把握します。これにより、主要な移動パターンや需要の傾向が分かります。

  • 移動手段
    どのような交通手段を使用して移動するか(車、公共交通機関、自転車、徒歩など)を記録します。これにより、交通手段の利用状況がわかります。

  • 出発時刻と到着時刻
    移動の時間帯や旅行の所要時間を把握します。これにより、渋滞やピーク時間などの交通の問題を分析できます。

  • 目的
    移動や旅行の目的(通勤、買い物、レジャーなど)を調査します。これにより、需要の種類や傾向が明らかになります。

  • 移動距離と所要時間
    移動距離や所要時間を記録し、交通システムの効率性や改善の余地を評価します。

これらのデータは、交通インフラの計画、公共交通機関の運行スケジュールの最適化、渋滞の緩和、環境への影響の評価など、都市や地域の交通に関する多くの課題に対する解決策を導き出す際に役立ちます。

プローブ調査

プローブ調査は、主にGPSデータを使用して交通状況や移動パターンを収集し、交通ネットワークの評価や交通政策の策定に役立つ手法です。プローブ調査は、「プローブビークル調査」と「プローブパーソン調査」の2種類に分類されます。

プローブビークル調査

プローブビークル調査は、GPSを搭載した車両(プローブビークル)の移動データを収集し、交通状況や道路ネットワークの評価に利用します。プローブビークルは多くの場合、タクシーや配送トラックなど、商業用途で活用される車両にGPSデバイスが組み込まれています。これにより、リアルタイムで交通流情報を収集することが可能です。

プローブパーソン調査

プローブパーソン調査は、個人のスマートフォンなどから得られるGPSデータを使用して移動パターンや旅行行動を分析する手法です。これにより、個々の人々の通勤ルート、移動目的、出発時刻などを理解することができます。プローブパーソン調査は、都市計画や交通政策の立案において、特定の人々の行動パターンに関する洞察を提供します。

プローブ調査のメリット

従来の交通調査手法は、アンケート調査や交通センサーなどを使用してデータを収集しました。これにはいくつかの制約があります。例えば、アンケート調査は参加者の回答に依存し、正確なデータを得るためには時間と労力がかかります。また、交通センサーは限られた箇所に設置されるため、広範な地域のデータを収集することが難しい場合があります。

プローブ調査はリアルタイムでデータを収集できるため、即座に交通状況や移動パターンを把握できます。また、大規模なデータを収集することができるため、広範なエリアや多様な移動パターンをカバーできます。プローブ調査は、より正確なデータを提供し、交通計画や政策の効果的な立案に役立ちます。また、プローブパーソン調査は個別の行動パターンを理解し、よりニーズに合わせたサービスやインフラを提供するための情報を提供します。

参考

https://www.amazon.co.jp/都市交通計画-新谷-洋二/dp/4765518485/ref=asc_df_4765518485/?tag=jpgo-22&linkCode=df0&hvadid=295659181908&hvpos=&hvnetw=g&hvrand=3858514524472932535&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=&hvdev=c&hvdvcmdl=&hvlocint=&hvlocphy=9170387&hvtargid=pla-524556036842&psc=1&th=1&psc=1

Ryusei Kakujo

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