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2022-04-05

ランダム効用理論

ランダム効用理論とは

ランダム効用理論とは、不確実性の下での選択行動をモデル化するための広く用いられる枠組みであり、異なる分野における意思決定プロセスを理解し予測するための洞察を提供します。この理論は、20世紀中頃に開発され、以降、経済学、マーケティング、交通、環境政策などの様々な分野の基盤となり、現実世界の設定での意思決定プロセスを分析するために役立っています。

意思決定プロセス

ランダム効用理論の文脈で、個人は、異なる代替案から得られる効用に基づいて選択を行うことが想定されています。ここでの効用とは、個人が選択から得る満足度や幸福感を測る尺度と考えることができます。一連の代替案に直面した場合、個人は、限られたリソースや利用可能な選択肢などの制約条件に従って、自分の効用を最大化する代替案を選択することが想定されています。

効用の分解

ランダム効用理論は、代替案から得られる効用が2つの要素に分解できるという仮定を立てています。それは、決定論的要素とランダム要素です。決定論的要素は、代替案の属性(例えば、価格、品質、ブランド)や個人の特徴(例えば、収入、好み、信念)など、個人の好みに影響を与えるシステマティックな要因を捉えます。この要素は、これらの観測可能な要因の関数で表現され、線形または非線形である場合があります。

一方、ランダム要素は、代替案の選択に影響する観測できない要因を表します。これらの要因には、測定誤差、省略された変数、または好みに固有のランダム性などが含まれます。ランダム要素は、通常、グンベル分布や正規分布などの特定の確率分布に従うと仮定され、意思決定プロセスの不確実性とばらつきを捉えるために使用されます。

効用関数と選択確率

ランダム効用理論では、個人が検討する代替案から効用を得ること、そしてその効用が決定論的要素とランダム要素に分解できることを仮定します。個人iが代替案jから得る効用をU_{ij}と表した場合、効用は次のように表現されます。

U_{ij} = V_{ij} + \epsilon_{ij}

ここで、V_{ij}は決定論的要素であり、代替案の観測可能な属性や個人の特徴の関数であり、\epsilon_{ij}はランダム要素であり、個人の選択に影響を与える観測できない要因を表します。

選択確率を推定するためには、ランダム要素\epsilon_{ij}の確率分布に関する仮定をする必要があります。一般的には、ランダム要素がガンベル分布に従うと仮定することがあり、これにより多項ロジットモデルが導出されます。

ランダム効用理論の応用

この章では、マーケティング調査や消費者行動、交通経済学やルート選択、環境および資源経済学など、異なる分野におけるランダム効用理論の様々な応用について紹介します。

マーケティング調査と消費者行動

ランダム効用理論は、消費者の嗜好をモデル化し、選択行動を予測するための堅固な枠組みを提供するため、マーケティング調査や消費者行動研究で広く使用されています。選択確率を推定することで、研究者は、消費者の嗜好を推定し、新しい製品やサービスの潜在的な市場シェアを評価することができます。

例えば、市場調査技術の一つであるコンジョイント分析は、ランダム効用理論に依存しています。コンジョイント分析は、消費者が異なる製品属性から得る効用を推定するために使用されます。コンジョイント分析により、価格、ブランド、品質、デザインなど、さまざまな製品特徴の重要性を定量化し、異なる製品構成に対する消費者の嗜好を予測することができます。この情報は、新製品の開発、価格戦略、マーケティングキャンペーンの立案において、企業にとって非常に有益です。

交通経済学とルート選択

ランダム効用理論のもう一つの重要な応用は、交通経済学の分野で、ルート選択行動をモデル化して予測することです。旅行者のルート選択に影響を与える要因を理解することで、交通計画者や政策立案者は、より効率的かつ持続可能な交通システムを開発することができます。

ランダム効用理論に基づくルート選択モデルは、旅行時間、距離、費用、道路状況などの要因を考慮して、旅行者が異なるルートから得る効用を推定します。これらのモデルを使用して、渋滞料金、インフラ投資、公共交通改善などのさまざまな交通政策の影響を分析し、ルート選択行動や交通システム全体のパフォーマンスに与える影響を予測することができます。

環境および資源経済学

ランダム理論は、環境および資源経済学の分野でも使用されており、個人の環境財やサービスへの嗜好をモデル化するために使用されています。この文脈では、環境アメニティ(クリーンな空気、水、レクリエーションエリアなど)の非市場価値を推定するのに役立つランダム効用・モデルが使用されます。

環境経済学のランダム効用理論の一つの人気のある応用は、旅行費用データを使用したレクリエーション需要の推定です。レクリエーションサイトの選択を、旅費用とサイト属性の関数としてモデル化することで、環境機能の非市場価値を推定することができます。これにより、異なるレクリエーション機会に対する個人の価値を推定し、環境政策や資源管理の決定が個人の福利にどのように影響を与えるかを評価することができます。

参考

http://www.columbia.edu/~md3405/Choice_PHD_Utility_3_19.pdf
https://www.youtube.com/watch?v=lMNXvI8IK20&ab_channel=ResEcon703-UMassAmherst

Ryusei Kakujo

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