αエラーとβエラー
標本調査から母集団を推定するにはどうしても限界があり、常に誤った推定をしてしまう可能性がつきまといます。この誤った推定をエラーと呼び,エラーには αエラーとβエラーの2種類があります。
αエラーとは「本当は差がないのにもかかわらず、有意差があると結論づける間違い」であり、この間違いをしてしまう確率をαと表します。例えばαエラーをの確率が5%の場合は「5%の確率で本当は差がないのにもかかわらず有意差があると結論づける」という解釈になります。
βエラーとは「本当は差があるのにもかかわらず、有意差がないと結論づける間違い」であり、この間違いをしてしまう確率をβと表します。例えばβエラーの確率が10%の場合は「10%の確率で本当は差があるのにもかかわらず有意差がないと結論づける」という解釈になります。
αエラー、βエラーを臨床試験の薬効で説明すると次のようになります。
- αエラー:本当は薬効がないにもかかわらず検定で有意になる
- βエラー:本当は薬効があるにもかかわらず検定で有意にならない
検定の結果/本当の薬効 | 薬効あり | 薬効なし |
---|---|---|
有意である | OK | αエラー |
有意でない | βエラー | OK |
検出力
βエラーの話をする際によく出てくる用語として検出力(Statistical Power)があります。検出力とは、「本当に差があるときに差があると結論づける確率」です。定義としては
αエラーと βエラーの不利益
標本調査の結果から得られた結論を母集団に拡張するとき、αエラーやβエラーは確率的に発生してしまいます。 αやβは確率であり、対象の試験や状況により許容できる度合いが異なります。以下、臨床試験、異常検出の例を紹介します。
臨床試験の場合
臨床試験では、αエラーとβエラーは通例、次のように設定されます。
- αエラー:1 - 5%
- βエラー:10 - 20%
αエラーはβエラーと比べて厳しく扱われます。その理由は、αエラーの方が社会的に影響が大きいからです。
αエラーは「薬効がない薬剤に対して誤って薬効があると結論付けるエラー」になります。薬効がない薬剤が世の中に流通してしまうと、巨額の公費の損失になります。また、その薬剤に副作用のリスクがある場合は患者の不利益になります。そのため、臨床試験においてαエラーは小さくする必要がある確率になります。
一方、βエラーは「薬効がある薬剤に対して誤って薬効がないと結論付けるエラー」になります。この場合は、薬効があるにも関わらず薬事承認されないため、企業の不利益になります。しかし、社会全体に与える影響としては、αエラーと比較して大きくありません。そのため、βエラーはαエラーよりも許容範囲が広くなっています。
異常検出の場合
ある製品の異常検出を考えます。αエラー、βエラーは次のようになります。
- αエラー:正常な製品に対して誤って異常とみなすエラー
- βエラー:正常でない製品に対して誤って正常とみなすエラー
このような場合は αエラーよりも βエラーの方が問題となるため、βエラーは厳しく扱われます。